「AIで開発が安くなったなら、もう外注せずに自社でやればいい」——2026年に入り、中小企業からこうした相談が増えています。一方で、受託やSESで働くエンジニアからは「自分たちの仕事が減るのでは」という不安も聞こえてきます。同じ市場の変化を、発注する側と作る側が正反対の温度で見ている。今日はこの「内製化シフト」を、構造から整理してみます。

「内製化したい」が一気に増えた現場

ある製造業(社員40名)の経営者から、こんな相談を受けました。「Webの問い合わせ対応や、ちょっとした社内ツールくらいなら、AIを使えば自社で作れるんじゃないか」。

実際、これまで外注で50万円・2ヶ月かかっていた社内ツールが、社内の若手とコード生成AIの組み合わせで2週間・実質人件費だけ、というケースが現場で出始めています。発注側から見れば、これは「外注費という変動費を、自社人件費という固定費に置き換える」話です。だからこそ「内製のほうが得では」という声が、業界全体で一気に増えました。

なぜ「内製は得」が半分しか正しくないのか

ここで効くのが、make vs buy(自社で作るか、外から買うか)という古典的な判断軸です。

見落とされがちなのは、AIが安くしたのは「作る」コストだけだという点です。業務システムの総コストは「作る+運用+改修+人を維持する」で構成され、一般に初期開発が占めるのは全体の2〜3割、残り7割は運用・改修だと言われます。AIが効くのは入口の2〜3割。残り7割をどう回すかの設計がないまま内製に振ると、作った担当者が辞めた瞬間に止まります。

もう一つは機会費用です。限られた自社エンジニアを、競争優位に直結しない開発に張り付けるのは、本来コア領域に投じられたはずの時間を失うことでもあります。「作れるかどうか」と「作るべきかどうか」は別の問いなのです。

発注企業とエンジニア、それぞれの一手

発注企業が内製と外注を線引きするなら、判断軸はシンプルです。

  • 競争優位に直結する業務(例:自社の受発注フロー)→ 内製寄り。ノウハウを社内に貯める
  • 標準的で更新頻度が低い業務(例:経費精算)→ 外注・SaaS寄り
  • 「作れるか」でなく「5年運用し続けられるか」で判断する

エンジニア側が、内製化が進む市場で価値を上げる条件も3つに集約できます。

  1. コードを速く書く力より、「何を作らない方がいいか」を言える判断力
  2. 運用・引き継ぎまで設計し、作って終わりにしない力
  3. 業務側の言葉と技術を翻訳できる力

内製化が進むほど、単に「作れる人」の価値は下がり、「作るか・買うか・やめるかを一緒に決められる人」の価値が上がります。受託・SES側がこの層に立てるかどうかで、市場はさらに二極化していきます。

さいごに

あなたの会社がいま「内製化したい」と考えている業務は、5年後も自社で運用し続けたい業務でしょうか。エンジニアであれば、あなたは「速く作れる人」でしょうか、それとも「作るか否かを決められる人」でしょうか。立場は違っても、問いは同じ方向を向いています。

自社のどの業務を内製し、どこを外に出すか整理したい経営者の方、あるいはこうした判断の現場で力を磨きたいエンジニアの方は、それぞれDX相談・採用のご相談をお気軽にどうぞ。